発語障害のある子どもへの保育|コミュニケーション支援の実践例と専門家が教える効果的アプローチ

保育現場で発語障害のある子どもへのコミュニケーション支援に悩んでいませんか。言葉がなかなか出ない子どもや、発音が不明瞭な子どもへの対応は、保育士にとって大きな課題です。本記事では、発語障害のある子どもへの保育における具体的なコミュニケーション支援の実践例を詳しく解説します。

言語聴覚士や児童発達支援の専門家の知見に基づき、現場ですぐに活用できる支援方法をお伝えします。視覚支援ツールの活用から、保護者との連携方法まで網羅的にご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。

目次

発語障害のある子どもへの保育で知っておくべき基礎知識

発語障害とは、年齢相応の言葉の発達が見られない状態を指します。原因はさまざまで、一人ひとり異なる特性を持っています。適切な支援を行うためには、まず発語障害についての正しい理解が欠かせません。

発語障害の主な種類と特徴

発語障害にはいくつかの種類があり、それぞれ異なるアプローチが必要です。保育士として把握しておきたい代表的な種類をご紹介します。

言語発達遅滞(げんごはったつちたい)は、言葉の理解や表現の発達が遅れている状態です。言葉を話し始める時期が遅かったり、語彙の増え方がゆっくりだったりします。知的発達には問題がなく、単純性言語発達遅滞と呼ばれるケースも多くあります。

表出性言語障害は、言葉の理解力は正常でありながら、発語が遅れるタイプです。伝えたいことはあるのに、うまく言葉にできないもどかしさを抱えています。軽度の場合、成長とともに自然に改善することもあります。

受容性言語障害は、言葉の理解と発語の両方に遅れが見られます。約60%の子どもが就学時にも何らかの遅れが認められるとされています。早期からの専門的な支援が特に重要になります。

構音障害(こうおんしょうがい)は、特定の音を正しく発音できない状態です。「さかな」が「たかな」になるなど、音の置き換えが起こります。口や舌の動きの問題が原因となることが多いです。

吃音(きつおん)は、言葉がスムーズに出てこない状態です。同じ音を繰り返したり、言葉が詰まったりします。心理的な緊張で症状が悪化することがあります。

年齢別の言葉の発達目安

子どもの言葉の発達には個人差がありますが、おおよその目安を知っておくと支援の参考になります。文部科学省の調査によると、90%の子どもが18ヶ月までに、98%の子どもが24ヶ月までに初語を発するとされています。

年齢言葉の発達目安
0〜1歳喃語(なんご)を発する
1歳〜1歳6ヶ月一語文(「まんま」「わんわん」など)
1歳6ヶ月〜2歳二語文(「ママ、だっこ」など)
2歳〜2歳6ヶ月三語文を使い始める
3歳〜4歳複文を使えるようになる
4歳〜5歳会話のキャッチボールができる
5歳〜6歳物語を理解し伝えられる

ただし、言葉の遅れがあるからといって、すぐに発達障害と結びつけるべきではありません。「言葉のサポートがあることで力を発揮できる子ども」として捉えることが大切です。

発語障害の背景にある可能性

発語が遅れる背景には、複数の要因が考えられます。聴覚に問題がある場合は、音声を正確に聞き取れないため言葉の習得が遅れます。定期的な聴力検査が重要です。

対人関係の困難さが背景にあるケースもあります。自閉スペクトラム症(ASD)の特性として、コミュニケーションへの関心が薄い場合があります。人との関わりを楽しめる環境づくりが支援の第一歩となります。

知的発達の遅れが影響していることもあります。言葉の理解と表現の両面で支援が必要になります。一方で、知的発達に問題がなくても言葉だけが遅れるケースも珍しくありません。

コミュニケーション支援の基本原則と心構え

発語障害のある子どもへのコミュニケーション支援では、いくつかの基本原則を押さえることが重要です。専門家が推奨する効果的なアプローチの基盤となる考え方をご紹介します。

伝えたい気持ちを育てることが最優先

コミュニケーションの基本は、「この人に伝えたい」という気持ちを育てることです。言葉を教え込むことよりも、伝える意欲を引き出すことを優先しましょう。

児童発達支援の専門家によると、コミュニケーション能力は3つの力で支えられています。「言葉を理解する力」「言葉で表現する力」「相手に伝えたいと思う気持ち」の3つです。このバランスを意識した支援が効果的です。

楽しい遊びの中で「もう1回やりたい」という要求が生まれる場面を大切にしましょう。大人がいなければ成立しない遊びを通じて、人への興味ややりとりの楽しさを育てることができます。

子どもの行動や表情を丁寧に観察する

発語がない子どもも、さまざまな方法で気持ちを表現しています。手で押し返す、指さしをする、表情が変わるなど、非言語的なサインを見逃さないようにしましょう。

嫌なときに手で押し返すなどのアピールができているなら、それは立派なコミュニケーションです。その行動を認め、言葉を添えてあげることで、表現の幅を広げていけます。

子どもが何かを伝えようとしているときは、行動の前後関係に注目しましょう。何を見ていたか、何に触れようとしていたかを観察することで、伝えたい内容が見えてきます。

焦らず子どものペースを尊重する

言葉の発達には個人差が大きく、周囲と比較して焦る必要はありません。保育士が焦ると、子どもにもプレッシャーがかかり、逆効果になることがあります。

「早く話せ」「ちゃんと話せ」といった声かけは避けましょう。子どもの緊張を高め、かえって話しにくくさせてしまいます。言葉が出るまで待つ姿勢が大切です。

「ゆっくり」「落ち着いて」「もう一回言ってごらん」という言葉かけも控えましょう。良かれと思っての声かけでも、子どもを緊張させてしまうことがあります。

視覚支援ツールを活用したコミュニケーション支援の実践

視覚的な情報は、発語障害のある子どもにとって理解しやすい場合が多くあります。絵カードやシンボルを使った支援方法について、具体的な実践例をご紹介します。

絵カードの基本的な使い方

絵カードは、次の見通しを立てることや自分の気持ちを伝えることが苦手な子どもの支援に効果的です。視覚的に情報をキャッチすることが得意な子どもには特に有効とされています。

絵カード活用の実践例

4歳のAくんは発語がほとんどありませんでした。食べることが好きだったので、おやつの場面から絵カードを導入しました。最初は1枚のカードだけを使い、カードを渡すと好きなお菓子がもらえる体験を繰り返しました。「伝わることの喜び」を感じられるようになり、徐々にカードの種類を増やしていきました。

絵カードを使う際のポイントは、子どもが落ち着いている環境で始めることです。子どもの要求が出やすい場面を見極め、すぐに対応できる状況を整えましょう。突然カードを置いても、すぐに使えるようにはなりません。

最初は大人が「プロンプター」(黒子のような役割)として行動をサポートします。カードを取って渡すという動作を一緒に行い、体験を通じてその意味を理解できるよう支援しましょう。

PECS(絵カード交換式コミュニケーションシステム)の活用

PECS(ペクス)は、絵カードを使った体系的なコミュニケーション支援方法です。自閉スペクトラム症の子どもや、コミュニケーションに課題を持つ子どもに広く活用されています。世界150カ国以上で30年以上の実績があります。

PECSの特徴は、子どもから主体的にコミュニケーションを始めることを重視している点です。段階的に学んでいくシステムになっており、専門的な研修を受けた支援者のもとで実施するのが理想的です。

保育現場では、PECSの基本的な考え方を参考にした簡易的な絵カード支援から始めるとよいでしょう。「カードを渡すと要求が通る」という基本的な経験を積み重ねることが大切です。

スケジュールボードで見通しを持たせる

1日の流れを視覚的に示すスケジュールボードは、見通しを持つことが苦手な子どもに効果的です。次に何があるかがわかると、安心して活動に取り組めます。

スケジュールボードには、「朝の会」「外遊び」「給食」などの活動を示す絵カードを順番に並べます。活動が終わるごとにカードを外すことで、1日の進み具合を実感できます。

個人用の簡易スケジュールを作成することも効果的です。首から下げられるサイズのカードホルダーに、その日の予定を入れておきます。いつでも確認できることで安心感が生まれます。

AAC(拡大代替コミュニケーション)の導入と実践

AAC(Augmentative and Alternative Communication)は、音声言語に頼らないコミュニケーション方法の総称です。発語が難しい子どもにとって、自分の意思を伝える有効な手段となります。

AACとは何か

AACは「拡大・代替コミュニケーション」と訳されます。話すことに困難がある子どもや成人が、残存能力とテクノロジーを活用して意思を伝える技法です。絵カードや写真、ジェスチャー、電子機器など、さまざまなツールが含まれます。

重要なのは、AACの使用が言語発達を妨げることはないという点です。むしろ、発話の生成を促進する効果があるとされています。言葉が出るまでの「橋渡し」として活用できます。

AACは複数の方法を組み合わせて使うことが推奨されています。1種類だけではコミュニケーションニーズを満たすことはできません。状況に応じて最適な方法を選べるようにしましょう。

VOCA(音声出力コミュニケーションエイド)の活用

VOCA(Voice Output Communication Aids)は、ボタンを押すと録音された音声が再生される機器です。発語が難しい子どもでも、ボタンを押すことで「ちょうだい」「やめて」などの意思を音声で伝えられます。

シンプルなタイプは1つのボタンで1つのメッセージを再生します。複数のメッセージを登録できるタイプや、タブレット端末のアプリとして利用できるものもあります。

VOCAの導入に際しては、子どもの興味関心や操作能力に合わせた選択が必要です。専門家(言語聴覚士など)と相談しながら、適切な機器を選びましょう。

マカトンサインやジェスチャーの活用

マカトンサインは、英国で開発されたコミュニケーション支援法です。サインと話し言葉を同時に使うことで、意思伝達を可能にします。知的障害やダウン症、自閉症の子どもを対象として広く使われています。

手話とマカトンサインの違いは、マカトンが言語獲得のための指導法である点にあります。サインだけでなく、シンプルな線画(マカトンシンボル)と話し言葉の3つを組み合わせて使用します。

保育現場では、簡単なサインから取り入れることができます。「おいしい」「もういっかい」「おしまい」など、日常的によく使う表現から始めましょう。サインを使いながら必ず言葉も添えることがポイントです。

遊びを通じたコミュニケーション支援の実践例

遊びは子どもにとって最も自然なコミュニケーションの場です。楽しい遊びの中で、言葉への興味や伝えたい気持ちを育てることができます。

ソーシャルルーティーンの遊び

ソーシャルルーティーンとは、大人との楽しい繰り返しの遊びのことです。人への興味ややりとりの気持ちを育てる効果があります。「いないいないばあ」や「たかいたかい」などが代表的な例です。

ソーシャルルーティーン遊びの実践例

保育士と一緒にシャボン玉遊びをします。子どもがシャボン玉を追いかけて割る動作を繰り返し、「もっとやりたい」という様子が見られたら、人差し指を立てて「もう1回?」と声をかけます。この繰り返しの中で、「もういっかい」という言葉と動作を結びつけていきます。

遊びの中では、保育士がいなければ成立しない状況をつくることがポイントです。シャボン玉を吹く、ブランコを押すなど、大人の協力が必要な遊びを選びましょう。

子どもが「もっとやって」と伝えたくなる状況を意図的につくります。一度止めて待つことで、子どもからの発信を引き出すことができます。

感覚遊びで言葉の土台をつくる

感覚遊びは、五感を使った遊びを通じて言語発達の土台をつくります。砂遊びや水遊び、粘土遊びなど、感触を楽しむ遊びが含まれます。

感覚遊びの中で、保育士は豊富な言葉かけを行います。「さらさら」「ひんやり」「ぬるぬる」など、感覚を表す言葉を添えましょう。子どもは体験と言葉を結びつけて覚えていきます。

子どもの動作に言葉を添える「パラレルトーク」も効果的です。「砂を握ったね」「お水をかけたね」と、子どもの行動を実況中継するように話しかけます。

音楽やリズム遊びの活用

手遊び歌やわらべ歌は、言葉の発達を促す効果があります。リズムに乗せることで、言葉が記憶に残りやすくなります。繰り返しのある歌は特に効果的です。

「むすんでひらいて」「あたまかたひざぽん」など、動作を伴う手遊び歌を取り入れましょう。言葉と動作を一緒に覚えることで、理解が深まります。

楽器を使ったやりとり遊びも有効です。タンバリンを叩いて「ドン」、鈴を鳴らして「リンリン」と、音と言葉を結びつけます。

環境設定と保育室の工夫

発語障害のある子どもが安心してコミュニケーションできる環境を整えることは、支援の基盤となります。保育室の環境設定における具体的な工夫をご紹介します。

刺激を調整した落ち着ける空間づくり

コミュニケーションを取る際は、余計な刺激を減らすことが重要です。テレビの音や周囲のおもちゃなど、注意を散らす要素を最小限にしましょう。

静かな環境で話をすることで、子どもは大人の声に集中しやすくなります。窓を閉める、パーティションで区切るなどの工夫も効果的です。

1対1でゆっくり関われるスペースを確保することも大切です。他の子どもの視線を気にせず、安心して自分を表現できる場所をつくりましょう。

視覚的な手がかりを配置する

保育室内に視覚的な手がかりを設置することで、子どもの理解を助けます。トイレや手洗い場には、手順を示すイラストを貼っておきましょう。

おもちゃの収納場所には、中身を示す写真やイラストを貼ります。子どもが自分で選んで取り出せるようになり、要求の表現にもつながります。

活動エリアを色分けしたり、床にテープで区切りをつけたりすることも効果的です。「今どこで何をする時間か」がわかりやすくなります。

コミュニケーションボードの設置

保育室内にコミュニケーションボードを設置することで、子どもからの発信を促せます。よく使う絵カードをいつでも使える場所に配置しましょう。

「トイレに行きたい」「お茶がほしい」「遊びたい」など、基本的な要求を示すカードを用意します。子どもが指さしやカードを渡すことで意思を伝えられるようにします。

ボードは子どもの目線の高さに設置することがポイントです。自分で見て、自分で指さしたり取ったりできる位置を選びましょう。

保護者との連携と家庭での支援

保護者との緊密な連携は、発語障害のある子どもの支援において欠かせません。園と家庭で一貫した支援を行うことで、効果が高まります。

保護者の気持ちに寄り添う姿勢

保護者は子どもの発語の遅れに対して、不安や焦りを感じていることが多いです。まずはその気持ちを受け止め、共感する姿勢を示しましょう。

「○○ちゃんは発達障害かもしれません」といった断定的な伝え方は避けます。「言葉のサポートがあるとより力を発揮できるお子さんです」というポジティブな表現を心がけましょう。

保護者の育児方針や家庭環境を否定せず、できていることを認める声かけを大切にします。保護者が自信を持って子どもと関われるよう支援しましょう。

家庭での関わり方のアドバイス

家庭で取り組める具体的な方法をお伝えすることで、保護者の支援力を高められます。以下のようなアドバイスが効果的です。

  • 子どもの目を見て、ゆっくりはっきり話しかける
  • 子どもの動作に言葉を添える(「りんご食べるね」など)
  • 絵本の読み聞かせを毎日続ける
  • 子どもの発言を急かさず、待つ姿勢を大切にする
  • テレビを消して、会話の時間をつくる

園で使っている絵カードや支援方法を家庭でも活用できるよう、情報を共有しましょう。園と家庭で同じ方法を使うことで、子どもの混乱を防げます。

専門機関との連携

必要に応じて、専門機関との連携を保護者に提案することも保育士の重要な役割です。地域の発達支援センターや言語聴覚士のいる医療機関などを紹介しましょう。

言語聴覚士(ST)による定期的な評価を受けることで、より専門的な支援方法がわかります。3〜6ヶ月ごとの評価を活用し、園での関わり方に反映させることが効果的です。

療育機関を利用している場合は、そこでの支援内容を共有してもらいましょう。同じ方向性で支援を行うことで、子どもの成長を促進できます。

他児との関わりを促すインクルーシブな保育実践

発語障害のある子どもと他の子どもたちが共に育ち合う環境づくりは、インクルーシブ保育の核心です。すべての子どもにとって学びのある環境を目指しましょう。

クラスの子どもたちへの伝え方

発語障害のある子どもについて、クラスの子どもたちにどう伝えるかは慎重に考える必要があります。「○○ちゃんは言葉で伝えるのが難しいから、ゆっくり待ってあげようね」といった簡潔な説明が適切です。

違いを「できない」ではなく「得意なことが違う」として伝えましょう。「○○ちゃんは絵を描くのが上手だね」など、その子の強みも一緒に伝えます。

子ども同士のやりとりで困っている場面があれば、さりげなく仲介に入ります。「○○ちゃんは『一緒に遊びたい』って言いたいんだよ」と、気持ちを代弁してあげましょう。

協同遊びの場面設定

発語障害のある子どもも参加しやすい遊びを設定することが大切です。言葉に頼らなくても楽しめる遊びを取り入れましょう。

ボール遊びや砂場遊び、ブロック遊びなどは、言葉がなくても一緒に楽しめます。子ども同士が自然に関われる場面をつくりましょう。

役割分担のある遊び(ままごとなど)では、言葉を使わなくてもできる役割を用意します。「お皿を運ぶ係」「食べ物を並べる係」など、動作で参加できる役割を設定しましょう。

子ども同士のコミュニケーションを支援する

発語障害のある子どもと他の子どものやりとりを、保育士が橋渡しすることが重要です。両者の気持ちを代弁し、コミュニケーションが成立するよう支援します。

他の子どもが発語障害のある子どもの気持ちを理解しようとする姿勢を褒めましょう。「待ってあげたね、優しいね」と、その行動を認めることで望ましい関わりが増えます。

発語障害のある子どもが他の子どもに何かを伝えられたときは、その成功体験を大切にします。「伝わってよかったね」と、コミュニケーションの喜びを共有しましょう。

個別支援計画の作成と評価

発語障害のある子どもへの支援を効果的に行うためには、個別支援計画の作成が欠かせません。計画的な支援と定期的な評価を行うことで、着実な成長を促せます。

アセスメント(評価)の方法

支援計画を作成する前に、子どもの現状を正確に把握するアセスメントを行います。言葉の理解力、表現力、コミュニケーションへの意欲など、複数の観点から評価しましょう。

日常の保育場面での観察記録が重要な情報源となります。どのような場面で言葉が出やすいか、どのような支援があると伝えやすいかを記録しましょう。

保護者からの情報収集も欠かせません。家庭での様子や、過去の発達歴、医療機関の受診状況などを聞き取りましょう。

具体的な目標設定のコツ

支援計画には、具体的で達成可能な目標を設定します。「言葉を増やす」といった漠然とした目標ではなく、行動レベルで記述しましょう。

目標設定の例

×「言葉でのコミュニケーションを増やす」

○「絵カードを使って3種類の要求(おやつ、トイレ、遊び)を伝えられるようになる」

短期目標と長期目標を分けて設定することも効果的です。短期目標は1〜3ヶ月程度で達成可能なもの、長期目標は半年〜1年後の姿を描きましょう。

定期的な見直しと評価

支援計画は作成して終わりではなく、定期的な見直しが必要です。少なくとも3ヶ月に1回は進捗を確認し、必要に応じて計画を修正しましょう。

評価の際は、目標の達成度だけでなく、子どもの変化や成長の過程にも注目します。小さな進歩も見逃さず、記録に残しましょう。

評価結果は保護者とも共有し、今後の支援の方向性を一緒に確認します。保護者の意見も取り入れながら、次の計画に反映させましょう。

構音障害や吃音のある子どもへの配慮

構音障害や吃音は、発語障害の中でも特有の配慮が必要です。それぞれの特性を理解し、適切な支援を行いましょう。

構音障害のある子どもへの対応

構音障害は、成長とともに自然に改善することもあります。4〜5歳までは発達の過程で発音の誤りがあるのは珍しくありません。

発音の誤りを直接指摘したり、言い直しを求めたりすることは避けましょう。子どもの話の内容に集中し、「何を伝えたいか」を受け止める姿勢が大切です。

大人がゆっくりはっきりとした発音で話しかけることは、良いモデルとなります。ただし、「もっとはっきり言って」という指示は子どもを萎縮させるので控えましょう。

気になる場合は、言語聴覚士による専門的な評価を受けることをお勧めします。必要に応じて構音訓練を受けることで改善が期待できます。

吃音のある子どもへの対応

吃音は、言葉がスムーズに出てこない状態です。幼児期に一時的に見られることもありますが、長期間続く場合は専門家への相談が必要です。

吃音のある子どもへの対応で最も大切なのは、焦らず待つことです。言葉が出るまでゆったりと待ち、話を遮らないようにしましょう。

以下のような声かけは避けることが推奨されています。

  • 「ゆっくり話して」
  • 「落ち着いて」
  • 「深呼吸して」
  • 「もう一回言ってごらん」

これらは良かれと思っての言葉かけですが、子どもの緊張を高め、かえって吃音を悪化させることがあります。

子どもの話の内容に注目し、「そうなんだね」「楽しかったんだね」と共感的に応じましょう。話し方ではなく、伝えたい内容を大切にする姿勢が子どもの安心感につながります。

発語障害のある子どもの保育を成功させる保育士の専門性

発語障害のある子どもへの保育を成功させるには、保育士の専門性向上が欠かせません。継続的な学びと、チームでの連携が重要です。

研修や学習の機会を活用する

発達支援や言語発達に関する研修に積極的に参加しましょう。言語聴覚士が講師を務める研修では、専門的な知見を学ぶことができます。

オンライン研修やセミナーも増えており、忙しい保育士でも参加しやすくなっています。最新の支援方法やツールについて情報を得る機会として活用しましょう。

書籍や専門誌からの学習も効果的です。発達支援に関する実践事例を読むことで、自分の保育に活かせるヒントが得られます。

園内でのチーム支援体制

発語障害のある子どもの支援は、担任一人で抱え込まず、園全体で取り組むことが重要です。定期的なケース会議を開き、情報を共有しましょう。

園内に加配保育士がいる場合は、役割分担を明確にします。日々の観察記録を共有し、支援の一貫性を保つことが大切です。

園長や主任との連携も欠かせません。保護者への対応や外部機関との連携について、相談しながら進めましょう。

自分自身のメンタルヘルスケア

発語障害のある子どもへの支援は、保育士にとって精神的な負担が大きいこともあります。一人で抱え込まず、同僚や上司に相談できる環境を大切にしましょう。

うまくいかないことがあっても、自分を責めすぎないようにしましょう。子どもの成長には時間がかかるものです。小さな進歩を喜び、前向きな気持ちを保つことが長期的な支援につながります。

発語障害のある子どもへのコミュニケーション支援で大切なこと

発語障害のある子どもへの保育におけるコミュニケーション支援は、子どもの「伝えたい」という気持ちを大切にすることから始まります。言葉を教え込むことよりも、コミュニケーションの楽しさを感じてもらうことを優先しましょう。

視覚支援ツールやAAC(拡大代替コミュニケーション)は、言葉の発達を妨げるものではありません。むしろ、コミュニケーションの成功体験を積み重ねることで、言葉への意欲を高める効果があります。子どもの特性に合わせて、適切なツールを選びましょう。

保護者との連携、専門機関との協力、園内でのチーム支援は、効果的な支援の基盤となります。一人で抱え込まず、多くの人の力を借りながら、子どもの成長を見守っていきましょう。

いつでも主役は子どもです。大人の都合ではなく、子どもが伝えたいと思っている場面を見極め、少しずつ伝わる喜びや具体的な表現手段が身につくよう、丁寧に関わっていくことが大切です。発語障害のある子どもが「わかってもらえた」「伝わった」という成功体験を積み重ねられる保育を目指しましょう。

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