発達障害の子どもが就学前にやっておきたい準備と支援|年長から始める入学前の全手順
小学校入学を控えた発達障害のあるお子さんの保護者にとって、「就学前にやっておきたい準備と支援」は最大の関心事ではないでしょうか。「何をいつまでに始めればよいのか」「わが子に合った学びの場はどこか」と、漠然とした不安を感じている方は少なくありません。
この記事では、就学相談の進め方から学級選びのポイント、家庭で取り組める生活習慣づくりやソーシャルスキルの練習、さらにはサポートブックの作成方法や療育機関との連携まで、入学前に必要な情報をすべて網羅しました。発達支援の現場で積み重ねられた知見と最新の統計データに基づき、専門家の視点から具体的に解説します。
読み終えたころには、「次に何をすればよいか」が明確になっているはずです。お子さんの安心できる小学校生活のために、ぜひ最後までお読みください。
発達障害のある子どもの就学前にやっておきたい準備と支援の全体像
まずは、入学前に取り組むべき準備の全体像を把握しましょう。大きく分けると、以下の5つの領域があります。
- 就学相談を受けて、お子さんに合った学びの場を選ぶこと
- 家庭で基本的な生活習慣を整えること
- 社会性やコミュニケーション力を育てること
- 学校と情報を共有するための「サポートブック」を準備すること
- 療育機関や福祉サービスとの連携体制を築くこと
これらはどれか一つだけ取り組めばよいものではありません。それぞれが連動しており、早い段階から並行して進めることが大切です。
次のセクションからは、各領域の具体的な進め方を詳しく見ていきます。
就学相談の流れとスケジュール|いつから何を始めるか
就学相談とは何か
就学相談とは、お子さんにとって最適な学びの場を一緒に考えるための仕組みです。各自治体の教育委員会が窓口になっており、専門の相談員や心理士が対応します。
対象となるのは、発達障害やその疑いがあるお子さんだけではありません。「集団生活に不安がある」「言葉の発達がゆっくり」といったグレーゾーンの段階でも利用できます。
相談したからといって、特別支援学級への入級が強制されるわけではありません。あくまでもお子さんの状態を多角的に把握し、最良の選択を見つけるための場です。
就学相談のスケジュール
就学相談のスケジュールは自治体によって異なりますが、一般的な流れは次のとおりです。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 年長の4月〜6月 | 就学相談の説明会への参加、申し込み |
| 年長の5月〜9月 | 教育委員会での面談、発達検査の実施 |
| 年長の7月〜10月 | 学校見学、体験入学 |
| 年長の10月〜11月 | 就学支援委員会による判定 |
| 年長の11月〜12月 | 就学先の決定 |
| 年長の1月頃 | 就学通知の受け取り |
注意したいのは、年長になってからでは準備期間が短くなる場合があることです。可能であれば、年中の後半(4〜5歳頃)から情報収集を始めておくと安心です。
就学相談で聞かれる内容
面談では、主に以下のような内容を聞かれます。
- お子さんの生育歴(出生時の状況、発達の経過など)
- 園での集団生活の様子(友だちとの関わり、活動への参加度)
- 得意なことと苦手なこと(感覚の過敏さ、切り替えの難しさなど)
- 保護者が希望する就学先と、その理由
- 現在受けている療育や医療的支援の内容
事前にメモを作成しておくと、当日のやりとりがスムーズになります。園の先生にも日常の様子を書面でまとめてもらえると、より正確な情報が伝わります。
就学相談で行われる発達検査
多くの自治体では、就学相談の過程で発達検査が実施されます。代表的なものは「新版K式発達検査」「WISC(ウィスク)知能検査」「田中ビネー知能検査」の3つです。
検査では、お子さんの知的発達の水準や認知の特徴、得意・不得意のバランスを客観的に把握します。結果はIQ(知能指数)やDQ(発達指数)として数値化され、学級選びの重要な判断材料になります。
ただし、数値だけで就学先が決まるわけではありません。お子さんの行動面、社会性、保護者の意向なども含めて総合的に判断される点を覚えておきましょう。
学びの場はどう選ぶ?通常学級・通級・特別支援学級の違い
3つの学びの場の特徴
公立小学校に進学する場合、主に3つの学級形態から選択します。それぞれの特徴を正しく理解することが、適切な判断の第一歩です。
| 学級の種類 | 在籍の仕方 | 1クラスの人数 | 対象となる子 |
|---|---|---|---|
| 通常学級(普通級) | 常時在籍 | 35〜40名程度 | 少しの配慮で集団生活が可能な子 |
| 通級指導教室 | 通常学級に在籍し週数時間だけ通級 | 個別または少人数 | 軽度の発達障害やグレーゾーンの子 |
| 特別支援学級(支援級) | 支援級に在籍 | 8名以下 | 中程度以上の支援が必要な子 |
文部科学省の最新統計によると、特別支援学級の在籍者数は2024年度時点で約39.5万人に達しており、過去10年間で大きく増加しています。通級指導教室の利用者も約19.6万人と年々拡大しています。
通常学級(普通級)の特徴
通常学級では、定型発達の子どもたちと同じ環境で学びます。集団の中で刺激を受けながら社会性を育てられることが大きなメリットです。
一方で、個別の配慮が行き届きにくい面もあります。着席が難しい、指示が通りにくい、感覚過敏があるといった特性がある場合、本人に大きな負担がかかることもあります。
近年は合理的配慮の提供が義務化されています。担任の先生やスクールカウンセラーと連携し、席の位置の工夫やイヤーマフの使用許可など、個別の対応を相談することが可能です。
通級指導教室の特徴
通級指導教室は、通常学級に在籍しながら週1〜8時間程度、別室で個別指導を受ける仕組みです。「通級による指導」と正式には呼ばれます。
対象となるのは、言語障害、自閉症、情緒障害、学習障害(LD)、注意欠如・多動症(ADHD)などの特性がある子どもです。指導内容はお子さんの課題に応じて個別に設定されます。
通常学級での集団生活を基盤としながら、苦手な部分だけ専門的なサポートを受けられる点が最大の利点です。ただし、学校内に通級指導教室が設置されていない場合は、他校に通う「他校通級」が必要になることもあります。
特別支援学級(支援級)の特徴
特別支援学級は、1学級あたりの上限が8名と少人数で運営されます。個別の教育支援計画と指導計画に基づき、一人ひとりのペースに合わせた学習が可能です。
主な種類として「知的障害学級」と「自閉症・情緒障害学級」の2つがあります。前者はIQ70以下を目安とし、後者はIQに関わらず情緒面やコミュニケーション面に課題がある子どもが対象です。
多くの学校では「交流学級」の仕組みがあり、体育や音楽、給食などの時間は通常学級の子どもたちと一緒に活動することもできます。支援級に在籍しつつ、社会性を育てる機会も確保できるのが特徴です。
学級選びで重視すべき5つのポイント
学級選びに正解は一つではありません。お子さんの状態と環境の両面から、以下の5つのポイントを軸に判断しましょう。
- お子さんの知的発達の水準と学習面での支援の必要度
- 集団生活への適応力(着席、順番待ち、切り替えなど)
- 感覚面の特性(聴覚過敏、触覚過敏など)の程度
- お子さん本人の気持ちや意思
- 入学予定校の支援体制(支援員の配置、教室の環境など)
可能であれば、入学前に候補となる学級を実際に見学し、お子さんの反応を観察することをおすすめします。就学相談の担当者に依頼すれば、学校見学の調整をしてもらえるケースがほとんどです。
家庭でできる生活習慣の準備|入学までに身につけたい力
なぜ生活習慣が重要なのか
小学校では、保育園や幼稚園に比べて「自分でやる」場面が格段に増えます。先生が一人ひとりに手厚く声をかける機会は減り、着替え、持ち物の管理、トイレなども自力で行うことが求められます。
発達障害のあるお子さんの場合、新しい環境への不安がとりわけ大きくなりがちです。入学前に基本的な生活動作を練習しておくことで、環境の変化による負担を軽減できます。
大切なのは、「完璧にできること」ではありません。「手伝ってもらいながらでも達成できた」という成功体験を積み重ねることが、自信の土台になります。
朝の身支度と時間管理の練習
小学校では登校時間が決まっています。入学の半年ほど前から、小学校の登校時間に合わせた朝のリズムを作り始めましょう。
具体的には、以下のステップを一つずつ練習します。
- 決まった時間に自分で起きる練習をする
- 着替えを一人で行えるようにする(ボタン、ファスナー、靴ひもなど)
- 朝ごはんを時間内に食べる習慣をつける
- 持ち物を確認してランドセルに入れる練習をする
視覚支援が有効な子には、「朝やること」のイラスト付きチェックリストを作るのがおすすめです。手順を「見える化」するだけで、声かけの回数を大幅に減らせることがあります。
着替え・食事・排泄の自立に向けた工夫
日常生活の基本動作は、入学後の学校生活にそのまま直結します。特に重要なのは次の3つです。
衣服の着脱については、体操服への着替えを想定した練習が効果的です。前後ろの区別がつきやすいデザインの服を選んだり、名前シールを目印にしたりする工夫が役立ちます。
食事面では、給食の時間(20〜30分程度)に合わせて食べ終える練習を意識しましょう。箸の使用が難しい場合は、補助箸やスプーンの持参を学校に相談できます。
排泄については、和式トイレへの慣れが必要な場合があります。入学予定校のトイレ環境を事前に確認し、必要であれば練習しておくと安心です。
持ち物の管理と整理整頓
小学校では、教科書、ノート、筆箱、給食袋など、持ち物の種類が一気に増えます。発達障害のあるお子さんは物の管理に困難を抱えやすいため、入学前から少しずつ慣れる機会を作りましょう。
実践例:ランドセル準備の練習
「教科書を入れる」「筆箱を入れる」「給食袋をフックにかける」といった手順をイラスト付きのカードにして、毎朝同じ順番で行う練習をします。視覚的な手がかりがあると、手順の記憶が定着しやすくなります。
整理整頓が苦手な子には、色分けしたファイルや仕切りつきのボックスを活用します。「赤いファイル=国語」「青いファイル=算数」のように、色と教科を対応させると分かりやすくなります。
ソーシャルスキルとコミュニケーション力の育て方
小学校で求められる社会性とは
小学校の集団生活では、園よりも高度な社会性が求められます。具体的には次のような場面で困難が生じやすくなります。
- 45分間の授業中、席に座って話を聞く
- 先生の一斉指示を理解して行動する
- 順番やルールを守って友だちと遊ぶ
- 自分の気持ちを言葉で伝える
- 困ったときに助けを求める
これらのスキルは、日常の中で段階的に練習することで身につきます。「一朝一夕にはできないが、繰り返すことで着実に伸びる」と捉えることが大切です。
SST(ソーシャルスキルトレーニング)の活用
SST(ソーシャルスキルトレーニング)は、社会生活に必要なスキルを体系的に学ぶためのプログラムです。療育施設や児童発達支援事業所で実施されていることが多く、就学前の子どもにも広く活用されています。
SSTでは、ロールプレイ(役割演技)、モデリング(お手本を見る)、フィードバック(振り返り)という3つのステップで練習します。
具体例:「順番を待つ」練習
先生がお手本を見せた後、子ども同士でスライドの順番を待つロールプレイをします。待てた子には「待てたね!」と具体的に褒めてフィードバックを返します。成功体験を重ねることで、実際の場面でも使えるスキルへと般化していきます。
家庭でも、ボードゲームやカードゲームを通じて「順番を待つ」「負けても怒らない」といった練習が可能です。遊びの中で自然に学べると、子どもの負担が少なく効果的です。
気持ちの表現と感情コントロール
発達障害のあるお子さんの中には、自分の感情をうまく認識したり言葉にしたりすることが難しい子がいます。入学後に友だちトラブルが起きやすい背景の一つでもあります。
感情の理解を助けるために、「きもちカード」や「きもち温度計」を使う方法が有効です。「うれしい」「かなしい」「イライラ」「こまった」など、感情を視覚的に示したカードを日常的に使うことで、少しずつ語彙が増えていきます。
感情のコントロールについては、怒りやパニックが起きたときの「クールダウンの方法」を事前に決めておくことが大切です。深呼吸を3回する、静かな場所に移動するなど、本人に合った方法を園や療育施設の先生と一緒に見つけておきましょう。
「困ったときに助けを求める力」を育てる
小学校では、困りごとがあっても自分から先生に伝えられないと、問題が放置されがちです。「わかりません」「手伝ってください」「トイレに行きたいです」など、必要な場面で声を出す練習は極めて重要です。
家庭では、あえて少し難しい課題を出し、「わからないときは何て言う?」と繰り返し確認する方法が効果的です。最初は決まったフレーズを暗記するところから始め、徐々に場面に応じた表現に広げていきます。
サポートブックの作り方と学校への伝え方
サポートブックとは何か
サポートブックとは、お子さんの特性や配慮してほしい点を文書にまとめたものです。入学時に担任の先生へ渡すことで、口頭だけでは伝えきれない情報を正確に共有できます。
発達障害の特性は外見からは分かりにくいことがほとんどです。新しい先生にゼロから説明するのは、保護者にとっても大きな負担になります。サポートブックがあれば、毎年の引き継ぎもスムーズに進みます。
決まった書式はなく、自治体が用意したテンプレートを使うこともできます。LITALICOジュニアや神戸市、大阪市などが公開しているテンプレートは、記入例も充実しており参考になります。
サポートブックに記載すべき項目
サポートブックには、以下の情報を記載するのが一般的です。
- お子さんの基本情報(名前、生年月日、診断名、服薬状況)
- コミュニケーションの特徴(言葉の理解度、表出方法)
- 感覚面の特性(音・光・触感などへの過敏または鈍麻)
- 行動面の特徴(こだわり、切り替えの難しさ、パニック時の対応)
- 得意なことと好きなこと
- 苦手なことと配慮してほしいこと
- パニックや癇癪が起きたときの対処法
- 家庭での効果的な声かけの方法
- 医療機関や療育機関の連絡先
記載のコツは、「こんなとき、こうしてもらえると助かります」と、具体的な場面と対応をセットで書くことです。抽象的に「配慮をお願いします」と書くよりも、先生が実際の場面で使いやすい情報になります。
サポートブックを渡すタイミングと伝え方
渡すタイミングは、入学説明会の後の個別面談時か、入学式の前に個別にアポイントをとるのがよいでしょう。多くの学校では、支援が必要な児童の保護者向けに事前面談の機会を設けています。
渡す際には、紙面だけでなく口頭でも重要なポイントを補足しましょう。特に伝えたいのは、パニック時の対応と、本人が安心する声かけの方法の2つです。
毎年度、クラス替えや担任の交代に合わせてサポートブックを更新し、再度渡すことも忘れないようにしましょう。お子さんの成長に伴い、内容も変化していくものです。
療育機関・福祉サービスとの連携を整える
児童発達支援と放課後等デイサービスの違い
就学前と就学後では、利用できる福祉サービスが変わります。この切り替えをスムーズに進めることが、入学後の支援の継続に直結します。
| 項目 | 児童発達支援 | 放課後等デイサービス |
|---|---|---|
| 対象年齢 | 0〜6歳の未就学児 | 6〜18歳の就学児 |
| 利用時間帯 | 主に平日の日中 | 放課後や長期休暇中 |
| 主な支援内容 | 個別療育、集団療育 | 生活能力向上、社会性の訓練 |
| 切り替え時期 | 小学校入学時に利用終了 | 小学校入学時から利用開始 |
就学を機に児童発達支援の利用が終了し、放課後等デイサービスへ移行します。入学前の年長の秋頃から、放課後等デイサービスの見学や手続きを進めておくことが重要です。
人気のある事業所は定員がすぐに埋まることがあるため、早めの情報収集を心がけましょう。
療育の引き継ぎ情報を整理する
児童発達支援事業所で受けてきた療育の内容や成果を、新たな支援者にきちんと引き継ぐことが大切です。引き継ぎが不十分だと、これまで積み上げてきた支援がリセットされてしまう恐れがあります。
引き継ぎの際にまとめておきたい情報は、以下のとおりです。
- これまでの療育の内容と頻度
- 療育を通じてできるようになったこと
- 現在も続けている支援の方法
- 本人が反応しやすい強化子(ごほうびや褒め方)
- 今後の課題と支援の方向性
これらの情報は、放課後等デイサービスだけでなく、学校への引き継ぎにも活用できます。サポートブックと合わせて、「支援のバトン」として共有しましょう。
医療機関との連携も忘れずに
発達障害の診断を受けている場合、主治医との連携も欠かせません。特に服薬治療を行っている場合は、学校側にも情報を共有しておく必要があります。
就学前のタイミングで、主治医に以下の点を確認しておくとよいでしょう。
- 入学後に予想される困りごとと対策
- 学校生活における配慮のポイント(診断書や意見書の作成依頼)
- 服薬のタイミングや副作用に関する学校への伝達事項
- 入学後の通院スケジュールの調整
「診断書」や「意見書」は、学校に合理的配慮を求める際の根拠資料になります。必要に応じて主治医に作成を依頼しましょう。
入学前の学校見学と環境調整のポイント
学校見学で確認すべきこと
学校見学は、お子さんに「これから通う場所」の具体的なイメージを持たせる絶好の機会です。就学相談を通じて依頼するか、学校に直接連絡して見学のアポイントをとりましょう。
見学の際に確認しておきたいポイントは次のとおりです。
- 教室の広さ、机の配置、掲示物の量(刺激の多さ)
- トイレの形式(和式か洋式か)と場所
- 靴箱やロッカーの配置、名前の表示方法
- 特別支援学級の教室の雰囲気と授業の様子
- クールダウンできるスペースの有無
- 支援員(介助員)の配置状況
お子さんと一緒に見学できると、入学への見通しが立ちやすくなります。写真撮影が可能であれば、帰宅後に見返すこともでき、不安の軽減につながります。
通学路の確認と登下校の練習
通学路の安全確認と歩行練習も、入学前の重要な準備です。発達障害のあるお子さんは、注意の持続やマルチタスクが苦手なことが多く、交通安全への配慮が欠かせません。
入学前に親子で通学路を実際に歩き、以下の点を確認しましょう。
- 信号や横断歩道の場所と渡り方
- 車の通りが多い危険な箇所
- 通学路上の目印になる建物やお店
- 所要時間と休憩できるポイント
- 雨の日に注意すべき場所
繰り返し歩くことで道順が記憶に定着し、お子さんの安心感が高まります。登校班がある場合は、集合場所と時間も合わせて確認しておきましょう。
入学前の環境調整で学校に相談できること
2016年4月に施行された「障害者差別解消法」の改正により、公立学校では合理的配慮の提供が法的義務となっています。保護者から申し出れば、学校は合理的な範囲で環境調整を行う必要があります。
入学前に学校へ相談できる環境調整の例を挙げます。
- 座席の位置(前方席、出入口に近い席、刺激の少ない位置など)
- 視覚支援ツール(スケジュール表、タイマーなど)の使用許可
- イヤーマフやノイズキャンセリングイヤホンの持ち込み許可
- テスト時の時間延長や別室受験の配慮
- 連絡帳の代わりにプリントで持ち物を伝える対応
すべてが叶うわけではありませんが、「お子さんが安心して学べる環境」を目指して、遠慮なく相談することが大切です。サポートブックと診断書を根拠資料として持参すると、話が具体的に進みやすくなります。
年長の1年間でやることタイムライン
入学までの準備を時系列で整理しました。以下のタイムラインを参考に、計画的に進めましょう。
| 時期 | やるべきこと |
|---|---|
| 年中の冬(1〜3月) | 就学に関する情報収集を開始。自治体の窓口に問い合わせる |
| 年長の4月 | 就学相談の説明会に参加。申し込み手続きをする |
| 年長の5〜6月 | 教育委員会との面談。発達検査を受ける |
| 年長の7〜9月 | 入学候補校への見学。通常学級と支援学級の両方を見る |
| 年長の9〜10月 | 放課後等デイサービスの見学と利用申し込みを始める |
| 年長の10〜11月 | 就学先の決定。就学時健康診断の受診 |
| 年長の11〜12月 | サポートブックの作成を開始する |
| 年長の1月 | 就学通知の受け取り。入学説明会への参加 |
| 年長の2〜3月 | 通学路の歩行練習。持ち物の準備と生活リズムの最終調整 |
すべてを完璧にこなす必要はありません。お子さんのペースに合わせて、できるところから取り組むことが大切です。
保護者のメンタルケアと相談先の確保
保護者自身の不安への対処
就学準備は保護者にとっても精神的な負担が大きい時期です。「この選択で本当によいのだろうか」「子どもは大丈夫だろうか」と、不安が尽きないのは自然なことです。
一人で抱え込まないことが何より大切です。同じ立場の保護者とつながる「親の会」や、SNS上の当事者コミュニティは、情報交換だけでなく精神的な支えにもなります。
自治体の発達支援センターや保健センターには、保護者向けの相談窓口が設けられている場合が多くあります。「子どもの相談」だけでなく「保護者自身の不安」を聞いてもらえる場を、ぜひ活用してください。
活用できる相談先一覧
就学前の相談先として代表的な機関をまとめます。
- 市区町村の教育委員会(就学相談の窓口)
- 発達障害者支援センター(都道府県・指定都市に設置)
- 児童発達支援センター(療育の相談と支援)
- 地域の保健センター(乳幼児健診後のフォローアップ)
- 発達障害情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンター運営、ウェブサイトで全国の支援情報を提供)
どこに相談すればよいか迷ったときは、まずお住まいの市区町村の「子育て支援課」や「障害福祉課」に電話してみましょう。適切な相談先を案内してもらえます。
早期療育が就学後の適応に与える効果
発達障害のある子どもの就学前にやっておきたい準備と支援を考えるうえで、早期療育の重要性は欠かせないテーマです。
国立障害者リハビリテーションセンターの研究によると、就学前に適切な療育を受けた子どもは、受けなかった子どもに比べて、入学後の集団適応や学習面での困難が軽減される傾向が認められています。
特に、脳の神経回路が急速に発達する幼児期(3〜6歳)は、支援の効果が出やすい時期とされています。この時期に感覚統合療法やSST、ペアレントトレーニングなどの専門的な支援を受けることで、社会性やコミュニケーション力の土台を築けます。
早期に発見・支援を受けた場合と、支援が遅れた場合とでは、思春期以降の二次障害(不登校、自己肯定感の低下、抑うつなど)のリスクにも差が出ることが、複数の研究で示されています。
「療育は早く始めるほどよい」とよく言われますが、焦る必要はありません。「今この瞬間が、お子さんにとって最も早いタイミング」です。まだ療育につながっていない場合は、まず地域の児童発達支援事業所に相談してみましょう。
入学後の「小1の壁」を乗り越えるために今できること
入学直後に起こりやすい困りごと
どれだけ入念に準備しても、入学直後はお子さんにとって大きな環境変化です。以下のような困りごとが起こりやすいことを、事前に知っておきましょう。
- 新しい環境に対する強い不安や緊張
- 授業中の離席や教室からの飛び出し
- 一斉指示が理解できず、取り残される感覚
- 友だち関係のトラブル
- 疲労の蓄積による癇癪やパニックの増加
これらは「準備不足」の証拠ではなく、環境変化に対する自然な反応です。「最初の数か月は慣らし期間」と心得て、長い目で見守ることが大切です。
入学後の連携体制を就学前から作る
入学前から学校との信頼関係を築いておくと、トラブルが起きたときの対応がスムーズになります。サポートブックの提出、事前面談、学校見学は、すべて「入学後の連携」の準備です。
さらに、以下の体制を就学前の段階で整えておくと心強いです。
- 担任、支援員、スクールカウンセラーの連絡先の確認
- 放課後等デイサービスと学校との情報共有の方法の取り決め
- 個別の教育支援計画の策定に向けた初回の打ち合わせ
個別の教育支援計画は、保護者、学校、関係機関が連携して作成する計画書です。入学後に作成されることが多いですが、就学前から話し合いを始めておくことで、4月からの支援がよりスムーズに立ち上がります。
お子さん自身の「見通し」を育てる
発達障害のあるお子さんにとって、「何が起こるか分からない状態」は大きなストレス源です。入学前から小学校生活の「見通し」を持たせる工夫を取り入れましょう。
効果的な方法をいくつか紹介します。
- 小学校を題材にした絵本や動画を一緒に見る
- 入学後の1日のスケジュールを絵や写真で示す
- 「困ったらどうする」カードを作って繰り返し確認する
- 「学校ごっこ」でチャイムの音や授業の流れを疑似体験する
「知っている」ことが増えるほど不安は減ります。お子さんが「小学校って楽しそう」と思えるような、ポジティブな見通しづくりを意識しましょう。
就学先決定後も柔軟に見直せるという安心感
最後にお伝えしたいのは、就学先の選択は「一度決めたら変えられないもの」ではないということです。
文部科学省も、就学先決定後の柔軟な転学を推奨しています。通常学級から特別支援学級への変更、あるいはその逆の変更も、年度途中を含め可能です。実際に、入学後の適応状況を見てから学級を変更する家庭は少なくありません。
大切なのは、お子さんの「今の状態」に合った環境を継続的に見直していく姿勢です。入学前の準備がすべてを決定するわけではなく、入学後もお子さんの成長に合わせて支援のあり方を柔軟に調整していけます。
就学前の準備で最も重要なのは、「支援のネットワーク」をつくっておくことです。学校、療育機関、医療機関、福祉サービス、そして保護者同士のつながりがあれば、入学後にどんな課題が生じても対応できます。
お子さんの可能性を信じ、一歩ずつ前に進んでいきましょう。この記事が、その道しるべとなれば幸いです。
