児童発達支援と保育所等訪問支援の違い|併用のメリットと使い分けを徹底解説

「子どもが保育園でうまくなじめていない」「療育に通っているけれど、園での様子がどうしても気になる」――そんな悩みを抱える保護者の方は、少なくありません。
発達に特性のある子どもへの支援サービスとして、「児童発達支援」と「保育所等訪問支援」の2つは、どちらも児童福祉法に基づく障害児通所支援の一種です。しかし、この2つのサービスは目的・支援場所・支援内容などが大きく異なります。「どちらを使えばよいのか」「そもそも違いが分からない」という声も多く聞かれます。
この記事では、児童発達支援と保育所等訪問支援の違いを徹底的に比較し、それぞれの特徴・利用方法・費用・そして2つを上手に組み合わせるメリットと使い分け方まで、専門的かつ実用的な情報をわかりやすくお伝えします。令和6年度の制度改定内容も反映した最新情報をお届けしますので、ぜひ最後までお読みください。
児童発達支援と保育所等訪問支援の違いを理解するための基礎知識
障害児通所支援とは何か
まず前提として、「障害児通所支援」という制度の枠組みを理解しておきましょう。障害児通所支援とは、平成24年(2012年)の児童福祉法改正によって創設された、発達に障害や特性のある子どもを対象とした福祉サービスの総称です。それまで障害の種別ごとにバラバラだった施設体系が一元化され、「どんな障害であっても、身近な地域で支援が受けられる」仕組みが整備されました。
障害児通所支援には主に以下のサービスが含まれます。
- 児童発達支援(主に未就学児を対象)
- 放課後等デイサービス(主に就学児を対象)
- 保育所等訪問支援(保育所・学校等への訪問)
- 居宅訪問型児童発達支援(外出困難な重度障害児向け)
この中でも「児童発達支援」と「保育所等訪問支援」は、特に混同されやすい2つのサービスです。それぞれを正確に理解することが、お子さんにとって最適な支援を選ぶ第一歩となります。
発達障害のある子どもを取り巻く現状
文部科学省が令和4年(2022年)に実施した調査によると、通常の学級に在籍する発達障害の可能性がある特別な教育的支援を必要とする児童生徒の割合は、約8.8%に上ります。これは10年前の調査(6.5%)から大幅に増加した数字です。また、発達「グレーゾーン」と呼ばれる診断には至らないが特性を持つ子どもを含めると、推定で全体の約15%に達するとも言われています。
厚生労働省のデータによれば、令和4年度時点で障害児通所支援サービス全体の利用児童数は約45.7万人にのぼります。支援ニーズは年々拡大しており、適切なサービスを選ぶ重要性はますます高まっています。
児童発達支援とは|基本概要と支援内容
児童発達支援の定義と目的
児童発達支援とは、主に0歳から6歳までの未就学児(就学前の障害のある子ども)が対象の通所型支援サービスです。障害のある子どもが事業所(療育施設)に通い、専門スタッフから個別・集団での指導や訓練を受けます。
その目的は、子どもの心身の発達を促しながら、将来の日常生活や社会生活がより円滑に送れるよう、早期から専門的な支援を行うことです。医師からの診断がなくても、自治体が支援の必要性を認めれば利用可能です。
令和6年7月改定ガイドラインでの5領域と4つの基本活動
令和6年(2024年)7月に策定された最新の「児童発達支援ガイドライン」では、支援の内容として以下の5つの領域が明確化されました。
- 健康・生活(基本的な生活習慣の形成など)
- 運動・感覚(体の動きや感覚の調整など)
- 認知・行動(理解力や問題解決力の向上など)
- 言語・コミュニケーション(言葉の獲得や表現力の向上など)
- 人間関係・社会性(他者との関わり方の習得など)
さらに、これらの領域を支える4つの基本活動として、「自立支援と日常生活の充実のための活動」「多様な遊びや体験活動」「地域交流の活動」「こどもが主体的に参画できる活動」が定められました。支援はこれらを複数組み合わせながら提供されます。
児童発達支援の具体的な支援内容
事業所でのサービス提供時間は1日あたりおおむね4〜6時間程度です。主な支援内容は以下のとおりです。
- 食事・排泄・着替えなどの日常生活動作の指導
- 言語訓練・コミュニケーション支援
- 感覚統合や運動機能の発達支援
- 集団生活への適応訓練(友達との関わり方など)
- 保護者向けの相談支援・家族支援
- 保育所・幼稚園・学校などとの地域連携
児童発達支援の種類:事業所と児童発達支援センター
児童発達支援には大きく2種類あります。
「児童発達支援事業所」は地域の多くに設置されており、通いやすさが特徴です。「児童発達支援センター」は地域の中核的な拠点として機能し、より専門性の高い支援を行うとともに、地域の保育所等への支援や保護者への相談にも応じます。令和6年度の法改正により、センターの役割はさらに強化され、地域全体の支援ネットワークの要として期待されています。
対象者と利用条件
利用対象は、障害(知的障害、自閉スペクトラム症、ADHD、ダウン症など)のある、または発達に遅れや特性がある未就学児です。医師の診断書や療育手帳がなくても、市区町村が支援の必要性を認めれば利用可能です。グレーゾーンと呼ばれる子どもも利用できます。
保育所等訪問支援とは|基本概要と支援内容
保育所等訪問支援の定義と目的
保育所等訪問支援とは、平成24年(2012年)の児童福祉法改正によって創設されたサービスで、発達に障害や特性のある子どもが通う保育所・幼稚園・学校などの集団生活の場に、専門の「訪問支援員」が出向き、子どもが集団生活に適応できるよう専門的な支援を行うサービスです。
最大の特徴は、「支援者が子どものいる場所に行く」という点にあります。子どもの「生活の場」に直接アプローチするため、事業所での療育では見えにくい課題を発見し、実生活に直結した支援が可能となります。インクルーシブ教育(障害のある子どもとない子どもが共に学ぶ教育)の推進にも深く関係しています。
保育所等訪問支援の対象者
保育所等訪問支援の対象は、0歳から18歳の児童です。児童発達支援が「未就学児のみ」を対象とするのに対し、保育所等訪問支援は就学後の小学生・中学生・高校生も利用可能です。
利用の条件は、保育所・幼稚園・学校などの集団生活の場に在籍していること、そして集団生活において専門的な支援が必要と認められることです。医学的な診断書や障害者手帳は必須ではありません。
訪問できる施設の範囲
保育所等訪問支援の対象となる訪問先施設は、児童福祉法上「保育所その他の児童が集団生活を営む施設として内閣府令で定めるもの」とされています。具体的には以下のような施設が含まれます。
- 保育所・認可保育園・小規模保育所
- 幼稚園・認定こども園
- 小学校・中学校・高等学校
- 特別支援学校
- 乳児院・児童養護施設
- 放課後児童クラブ(学童保育)
- 市区町村が認める「その他の集団生活を営む施設」
ただし、訪問先の施設の同意が必要です。訪問を拒否された場合はサービスを提供できません。事前に施設との連携・相談が欠かせません。
保育所等訪問支援の具体的な支援内容
訪問支援員が行う支援は、大きく「直接支援」と「間接支援」の2つに分かれます。
直接支援とは、訪問支援員が子ども本人に直接関わる支援です。例えば、集団活動の場での子どもの行動観察、コミュニケーションのきっかけづくり、着席維持や活動への参加を促す関わりなどが含まれます。支援は子どもを「集団に合わせる」のではなく、子どもの特性に合わせて環境や活動の流れを調整するという視点で行われます。
間接支援とは、訪問先の保育士・教員・支援スタッフに対して、対象の子どもへの関わり方・環境調整の方法などについてアドバイスを行うものです。職員が日常的に適切な対応を取れるようになることで、子どもの日々の生活の質が全体的に底上げされます。
さらに、訪問後には保護者への報告と家庭での関わり方に関する助言も行われます。子ども本人・施設職員・保護者という三方向のアプローチが保育所等訪問支援の大きな強みです。
訪問頻度と支援時間
訪問頻度は一般的に2週間に1回程度が基本とされています。1回の支援時間は1〜2時間(30分以上)が目安です。令和6年度の報酬改定では、訪問支援時間が30分未満の場合は算定不可となり、一定の支援の質が担保されるようになりました。子どもの状況や施設の事情に応じて、頻度・時間は柔軟に調整可能です。
訪問支援員の資格と専門性
訪問支援員には、児童指導員・保育士・理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)・心理担当職員等の資格が求められます。加えて、障害のある子どもへの直接支援や相談支援の経験が5年以上(または業務従事10年以上)であることが「訪問支援員特別加算」の要件とされており、高い専門性が求められるサービスです。
児童発達支援と保育所等訪問支援の違いを徹底比較
2つのサービスの主な違い一覧
両サービスの違いを整理すると、以下のようになります。
| 比較項目 | 児童発達支援 | 保育所等訪問支援 |
|---|---|---|
| 対象年齢 | 主に0〜6歳(未就学児) | 0〜18歳 |
| 支援の場所 | 事業所・センター内 | 保育所・学校など集団生活の場 |
| 支援の形式 | 通所型(子どもが通う) | 訪問型(支援者が出向く) |
| 主な目的 | 発達の促進・日常生活スキルの習得 | 集団生活への適応支援 |
| 支援時間 | 1日あたり4〜6時間程度 | 1回あたり1〜2時間程度(30分以上) |
| 利用頻度 | 週複数回が一般的 | 2週間に1回程度が目安 |
| 支援対象 | 子ども本人中心 | 子ども本人+施設職員+保護者 |
| 診断・手帳 | 不要(市区町村の認定があれば利用可) | 不要(同上) |
対象年齢の違い
最も大きな違いの一つは対象年齢です。児童発達支援は就学前(主に0〜6歳)の子どもを主な対象としています。一方、保育所等訪問支援は0歳から18歳までと幅広く、小学生・中学生・高校生も利用できます。そのため、保育所等訪問支援は学校生活の課題が生じた際にも活用できる点で、より長期的に使えるサービスです。
支援の場所の違い
児童発達支援は「事業所に子どもが通う」通所型のサービスです。事業所という安全で構造化された環境の中で、専門スタッフによる個別・小集団の支援が行われます。一方、保育所等訪問支援は「支援者が子どもの生活の場へ出向く」訪問型のサービスです。子どもが実際に過ごす環境の中で支援するため、より実生活に近い課題にダイレクトに対応できます。
支援の目的と役割の違い
児童発達支援の目的は、子どもの発達を全般的に促進し、将来の日常生活・社会生活に必要なスキルを積み上げていくことです。療育の土台を作る役割を担います。一方、保育所等訪問支援の目的は、集団生活の場で子どもが適応しやすくなるよう、環境を調整し、関わる大人(保育士・教師)の対応スキルも向上させることです。
支援時間・頻度の違い
児童発達支援は週1〜5回、1日4〜6時間という比較的長時間・高頻度の支援が一般的です。対して保育所等訪問支援は2週間に1回・1〜2時間が基本であり、頻度・時間ともに少なめです。これは訪問型という性質上、施設側の業務への影響を最小限に抑えながら支援を行う必要があるためです。
支援対象の違い
児童発達支援の主な支援対象はあくまで「子ども本人」です。ただし保護者支援も重要な要素として位置づけられています。一方、保育所等訪問支援は子ども本人への直接支援だけでなく、施設職員(保育士・教師)への間接支援も正式な支援内容として認められています。つまり、子どもを取り巻く「環境そのもの」を変えるアプローチが可能です。
利用の流れと受給者証の取得方法
受給者証とは何か
両サービスを利用するためには、まず「障害児通所受給者証」を取得する必要があります。これは、障害児通所支援の利用が認められたことを証明する市区町村発行の証明書です。サービスごとに受給者証が発行されるため、例えば児童発達支援と保育所等訪問支援の両方を利用したい場合は、それぞれの受給者証が必要となります。
児童発達支援の利用手順
一般的な利用の流れは以下のとおりです。
- 市区町村の福祉窓口(発達支援担当課など)や相談支援事業所に相談する
- 相談支援専門員によるアセスメント(聞き取り・面談)を受ける
- 「障害児支援利用計画」を作成し、市区町村に申請する
- 市区町村による支給決定を受ける
- 「障害児通所受給者証」が交付される
- 利用したい事業所と契約し、「個別支援計画」を作成して支援開始
保育所等訪問支援の利用手順
保育所等訪問支援の利用手順も基本的な流れは同様です。
- 保護者が市区町村窓口に相談し、障害児相談支援事業者を選ぶ
- 障害児相談支援事業者が子どもの状況を評価し、訪問の必要性を判断する
- 事業者・訪問先施設・保護者の三者で「障害児支援利用計画」を作成・申請する
- 市区町村から支給決定・受給者証の交付を受ける
- 保育所等訪問支援事業者が「保育所等訪問支援計画」を作成し、保護者が契約に署名・捺印する
- 事業者・訪問先施設・保護者で日程調整をして訪問支援を開始する
注意点として、訪問先の施設(保育所・学校など)の同意が不可欠です。事前に施設側へ「保育所等訪問支援を利用したい」と相談・説明しておくことをお勧めします。
利用にかかる費用と負担上限
両サービスとも、利用費用は「サービス提供に要した費用の原則1割」が利用者負担です。ただし、世帯の収入に応じて1ヶ月あたりの負担上限月額が設定されており、それ以上の負担は生じません。
| 区分 | 世帯の状況 | 負担上限月額(障害児通所支援) |
|---|---|---|
| 生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
| 低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
| 一般1 | 市町村民税課税(所得割28万円未満) | 4,600円 |
| 一般2 | 市町村民税課税(所得割28万円以上) | 37,200円 |
保育所等訪問支援の場合、1回あたりの利用者負担は1,000〜2,500円程度となるケースが多いとされています。ただし、実際の負担額は自治体・世帯収入・利用時間によって異なります。お住まいの自治体窓口への確認をお勧めします。
児童発達支援と保育所等訪問支援を併用するメリット
なぜ併用が推奨されるのか
実は、児童発達支援と保育所等訪問支援は原則として同日利用も含めた併用が可能です(自治体によって判断が異なる場合があるため、必ず事前確認が必要です)。そして、多くの専門家や支援者が「2つを組み合わせることで最大の効果が得られる」と述べています。
なぜなら、両サービスはアプローチの方向性が正反対だからです。児童発達支援は「事業所という安全な環境で子どもの力を伸ばす」、保育所等訪問支援は「実際の生活の場で子どもの力が発揮できるよう環境を整える」という役割を持っています。この2つが連携することで、支援の効果が相乗的に高まります。
併用の5つの具体的メリット
- 事業所で習得したスキルを実生活に般化(応用)できる:事業所で学んだ言語コミュニケーションの方法や行動パターンが、実際の保育所や学校の場面でも発揮できるよう、訪問支援員がサポートします。「般化(はんか)」と呼ばれるこのプロセスは発達支援において非常に重要です。
- 訪問支援員が現場の課題を把握し、事業所の支援に反映できる:訪問先での子どもの様子を事業所のスタッフと共有することで、支援計画をより実態に即したものにブラッシュアップできます。情報の一方通行ではなく、双方向の連携が実現します。
- 保育士・教師のスキルが向上し、日常の支援の質が高まる:訪問支援員が保育所等の職員に対して助言を行うことで、日常的な関わり方が改善されます。1回の訪問の効果が、その後の毎日の生活にわたって持続します。
- 保護者の安心感・情報量が大幅に増える:事業所でのフィードバックに加え、保育所・学校での子どもの姿を専門家の目線で報告してもらえます。「園での様子が全くわからない」という保護者の不安が解消され、適切な家庭支援にもつながります。
- 子どもの環境全体(エコシステム)を支援できる:家庭・事業所・保育所・学校というすべての場面を包括的にカバーできるため、子どもを取り巻く環境全体が支援の網で覆われます。断片的な支援ではなく、トータルなサポート体制が構築できます。
LITALICOジュニアによる実際の事例
ある女の子(Mちゃん)の事例です。Mちゃんは言葉でのコミュニケーションが苦手で、園での様子を保護者に話すことがほとんどなかったといいます。児童発達支援を利用しながら保育所等訪問支援を組み合わせたところ、訪問支援員から「困っているお友達に声をかけている」「一斉指示を聞いてみんなと同じように動けている」など、具体的なエピソードを定期的に報告してもらえるようになりました。保護者は「成長している実感が得られた」と話し、一斉指示への対応力や友達関係のトラブルも大幅に改善したとのことです。
使い分けのポイント|どちらを優先すべきか
状況別の使い分け判断基準
児童発達支援を優先すべき状況と、保育所等訪問支援を優先・追加すべき状況は以下のように整理できます。
まず児童発達支援から始めることが望ましいケース:
- 発達の遅れや特性が確認されたが、まだ就学前で基礎的な支援が必要な場合
- コミュニケーション・運動・感覚など、特定の領域での発達的なサポートが主な課題である場合
- 保育所や幼稚園への通所を開始したばかりで、まだ集団生活そのものへの適応課題が顕在化していない場合
- 療育の基盤づくりを優先したい乳幼児期の段階
保育所等訪問支援を追加・優先すべきケース:
- 事業所での支援効果が出ているにもかかわらず、保育所・学校での様子がうまくいっていない場合
- 保育士・教師から「集団での行動に課題がある」「他の子どもとのトラブルが多い」と指摘されている場合
- 就学後(小学生・中学生以上)であり、学校生活における適応課題が中心となっている場合
- 保護者が園・学校での子どもの具体的な様子を知りたい場合
- 入学・進学などの環境移行期に支援を強化したい場合
未就学児への使い分けの考え方
未就学児の場合、多くのケースでは「まず児童発達支援を利用し、保育所等訪問支援を追加する」という順序が現実的です。事業所での療育で子どもの基礎的な力を育てながら、保育所での集団生活の場でその力が発揮できるよう、訪問支援でサポートするというかたちです。
ただし、最初から保育所等訪問支援だけを利用することも可能です。例えば、すでに保育所に通っていてある程度の生活リズムが確立されており、「園での特定の行動上の課題を改善したい」という場合には、訪問支援のみの利用でも一定の効果が期待できます。
就学児(小学生以上)への使い分けの考え方
小学生以上になると、児童発達支援は利用できません(放課後等デイサービスへ移行)。そのため、この年齢以上では放課後等デイサービスと保育所等訪問支援の組み合わせが基本となります。学校での課題が大きい場合には、保育所等訪問支援を積極的に活用することが推奨されます。
同日利用の可否と注意点
同日利用は可能か
児童発達支援(または放課後等デイサービス)と保育所等訪問支援の同日利用は基本的に可能です。ただし、自治体によって判断が異なる場合があるため、事前に担当窓口への確認が必要です。時間帯が重複しないよう調整することが前提となります。
一方で注意が必要なのは、「同一サービスの同日複数利用はできない」という点です。例えば、同じ日に2か所の児童発達支援事業所を利用することはできません。保育所等訪問支援も同様に、同じ日に複数の訪問支援事業所を利用することはできません。この点を混同しないよう注意しましょう。
併用時の支援計画の重要性
2つのサービスを並行して利用する場合、それぞれの事業所間での情報共有と連携が非常に重要です。バラバラの方針で支援が行われると、子どもに混乱を与える可能性があります。相談支援専門員を通じた「障害児支援利用計画」の下で両サービスを一体的に管理し、定期的なモニタリングと支援計画の見直しを行うことが求められます。
令和6年度の制度改定による変化
令和6年報酬改定の主なポイント
令和6年(2024年)度の障害福祉サービス等報酬改定では、保育所等訪問支援に関していくつかの重要な変更が行われました。これらは支援の質向上とインクルーシブ教育の推進を目的としています。
基本報酬の見直し:
保育所等訪問支援の基本報酬(給付費)は、1035単位から1071単位に引き上げられました。
訪問支援員特別加算の変更:
訪問支援員の経験年数に応じた加算が再設定されました。5年以上10年未満で700単位、10年以上で850単位となり、より経験豊富な専門家の配置が評価される仕組みとなりました。
新設された主な加算:
- 多職種連携支援加算(1回につき200単位):関係機関との連携強化を評価する加算
- ケアニーズ対応加算(1日につき120単位):医療的ケア等が必要な子どもへの支援を評価する加算
- 強度行動障害児支援加算(1日につき200単位):強度行動障害を持つ児童への支援を評価する加算
- 関係機関連携加算(1回につき150単位):包括的な支援のための連携強化を評価する加算
令和6年7月保育所等訪問支援ガイドライン改定の意義
令和6年7月には「保育所等訪問支援ガイドライン(詳細版)」が新たに策定されました。このガイドラインにより、訪問支援の具体的な内容・手順・留意事項が詳細に明文化され、事業所間でのサービス品質のばらつきが解消される方向性が示されています。インクルーシブな環境づくりへの貢献を一層重視する姿勢も明確化されました。
児童発達支援ガイドライン(令和6年7月)の改定ポイント
令和6年7月に改定された児童発達支援ガイドラインでは、5領域・4つの基本活動の明確化に加え、保育所等訪問支援との連携強化が一層強調されました。児童発達支援センターが地域の拠点として保育所等訪問支援を担うことの意義も明記されており、両サービスの一体的・連携的な提供が制度として推進されています。
保護者が知っておきたい実践的なQ&A
Q1.障害の診断がなくても利用できますか?
はい、利用できます。児童発達支援も保育所等訪問支援も、医師による診断書や障害者手帳は必須ではありません。市区町村が「支援が必要」と認めれば、発達障害の診断を受けていないグレーゾーンのお子さんでも利用可能です。まずはお住まいの市区町村の福祉担当窓口や、発達障害者支援センターに相談してみましょう。
Q2.保育所等訪問支援の訪問を、保育所側が拒否することはありますか?
はい、訪問先施設の同意が必要なため、拒否された場合はサービスを受けることができません。ただし、近年はインクルーシブ教育への関心が高まっており、多くの施設で受け入れが進んでいます。拒否された場合でも、相談支援事業所や自治体の担当者を通じて、施設側への説明・交渉をサポートしてもらえることがあります。
Q3.受給者証はどこで取得できますか?
お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口(役所の福祉課・子ども発達支援課など)に申請します。申請には、子どもの状況に関する聞き取りや書類提出が必要です。相談支援事業所に依頼すると、計画作成から申請手続きまでサポートしてもらえます。
Q4.両方のサービスを利用した場合、費用は2倍になりますか?
費用はそれぞれのサービス利用に対して発生しますが、月ごとの負担上限額は世帯全体で設定されています。複数のサービスを利用していても、1ヶ月の自己負担は上限額を超えません。そのため、上限に達している場合は追加費用なしで両方のサービスを利用できます。
Q5.保育所等訪問支援は何歳まで利用できますか?
18歳まで利用可能です。保育所・幼稚園・小学校・中学校・高校のどの段階でも、在籍している集団生活の場がある限り継続して利用できます。利用期間の上限はなく、必要に応じて長期にわたってサポートを受けることができます。
Q6.相談はどこにすればよいですか?
最初の相談先としては、市区町村の福祉窓口・発達障害者支援センター・保健センター・かかりつけの小児科・相談支援事業所などが挙げられます。どこに相談すればよいか迷う場合は、子どものかかりつけ小児科医に「発達について相談したい」と伝えるだけでも、適切な機関を紹介してもらえることが多いです。
児童発達支援と保育所等訪問支援を上手に活用するために
支援の選択に迷ったときの判断フロー
支援サービスの選択に迷った場合は、以下のような視点で整理するとよいでしょう。
まず「お子さんの主な課題はどこにあるか?」を確認します。事業所という安全な環境での個別的な発達支援が中心に必要であれば児童発達支援が適しています。保育所・学校という実際の集団生活の場での適応や、施設職員の対応改善が中心の課題であれば保育所等訪問支援が適しています。そして両方の課題がある場合には、2つのサービスを組み合わせることが最善策となります。
継続的なモニタリングと計画の見直しの重要性
どちらのサービスを利用する場合でも、定期的な支援計画の見直し(モニタリング)が非常に重要です。子どもの発達状況・生活環境・ニーズは変化します。半年から1年に一度は相談支援専門員と連携し、「現在の支援は本当に子どものニーズに合っているか」を客観的に評価することが求められます。
地域の支援ネットワークを活用する
支援効果を最大化するためには、事業所・保育所・学校・家庭・医療機関という各機関が情報を共有し、同じ方向性でお子さんを支えることが大切です。相談支援専門員は各機関の橋渡し役を担います。必要に応じて「個別の支援会議」を開催してもらうよう依頼することも有効な手段です。
子どもの可能性を最大限に引き出すために今できること
児童発達支援と保育所等訪問支援の違いは、単に「通所か訪問か」というだけではありません。支援を行う場所・対象年齢・支援の方向性・アプローチ方法のすべてにおいて、この2つは異なる役割を担っています。
そして、この2つのサービスは決して「どちらかを選ぶ」ものではありません。事業所で発達の基盤を作り、訪問支援で実生活への架け橋を作るという、相補的な関係にあります。令和6年度の制度改定でもこの連携の重要性がさらに強調されており、両サービスを組み合わせることへの支援体制は整いつつあります。
大切なのは、「今、このお子さんに何が必要か」を専門家と一緒に丁寧に見極めることです。まだサービスを利用していない方は、ぜひ一度、市区町村の福祉窓口や相談支援事業所、あるいは発達障害者支援センターに相談してみてください。受給者証の取得から支援計画の作成まで、専門家がサポートしてくれます。
お子さんの「今」に合った最適な支援を選ぶことが、未来への可能性を大きく広げます。本記事が、その第一歩を踏み出すためのお役に立てれば幸いです。
